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気血津液 [東洋医学の基礎知識]

4 気血津液の異常による病証 (1)虚証と実証 気血津液の異常のみならず、一般に中医学では、病証を大きく「虚証」と「実証」に分けて治療します。 「虚証」と「実証」とは相反する病態にある病証をいいます。発病には人体を攻撃する因子(その代表が「病邪」)と人体を守ろうとする因子(「正気=せいき」という)との力関係が関与していて、病邪はさほど強くなくても正気が不足しすぎている場合と、正気は普通の状態でもそれ以上に病邪が強すぎる場合とがあります。前者によって起こった病証を「虚証」、後者によって起こった病証を「実証」と呼んでいます。 気血津液の病証のうち虚証は、気血津液のどれかまたは複数が不足することによって起こります。気血津液の実証は、気血津液のどれかまたは複数のものに代謝の異常が発生し(病理物質といわれる)、それが人体に悪影響を及ぼすことによって起こる病証です。このとき発生した病理物質は、病邪のひとつとして考えることもできます(専門的には、病因論のなかで「二次的病因」という分類に入ります)。 虚・実に対応する治療は、一般に「扶正=ふせい」(正気を扶助する)と「去邪=きょじゃ」(邪気を去除する)と呼ばれます。この扶正を行うときの漢方薬は「補益剤=ほえきざい」と呼ばれる分類のものを用い、鍼灸では「補法=ほほう」という操作を施します。去邪を行うときの漢方薬は補益剤以外の分類のものを用い、鍼灸では「瀉法=しゃほう」という操作を施します。   コラム―病証の虚実と体質の虚実 日本の漢方薬の効能書きによくみられる表現として、「比較的体質が虚弱な人」「比較的体力がある人」などがあります。これは体力が虚弱かそうでないかを比較するもので、病証の虚証と実証を比較するものではありません。このため理解の少ない一般の人が、効能書きをたよりに選ぶと、誤ってしまうことがよくあります。そのときかかった病気について虚証か実証かが選ぶポイントになるので、普段の体質が虚弱な人は必ず虚証になるとは限りません。例えば、普段からカゼをひきやすい人が、他の人が気持ちいいと感じる温度の冷房に当たって体調を崩したなら、病邪は強くないので虚証と考えていいでしょう。しかし同じ人でも、周りの者がみんなかかってしまうような強い病邪のインフルエンザにかかって、高熱などの激しい症状が出ているのであれば、実証になるのです。「虚弱な体質の人がかかるのが虚証、体力のある人がかかるのが実証」といった考え方は正しくありません。虚弱体質の人でも、強い病邪に傷害されて激しい症状が出ていれば、実証と判断して治療することが必要です。病証の虚実と見た目の体質の虚実を混同しないようにしなければなりません。  

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