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内科系疾患 [貴方の病気のタイプ]


4 認知症

老人性の認知症は、脳髄の萎縮などにより脳神経機能が衰退して、健忘・反応の遅鈍・知能低下・精神症状などが現れる疾患です。中医学では、脳を「髄海=ずいかい」といい骨髄の一番大きな部分であるとしていますが、それ以外に「元神の府」であるとしています。この元神の「神」とは「神明」のことであり、神明とは心に蔵されていて思考活動や感情の中枢であるとしています。そのため認知症の治療では、心と神明への対処も考慮します。

 

認知症の病証タイプ分類には、虚証に属す肝腎不足タイプ・脾腎両虚タイプと、実証に属す痰濁タイプ・血瘀タイプとがあります。しかし、どのタイプにもみな脳髄の消耗と臓腑の失調がみられ、多くの場合単純な虚証・実証ではなく、本虚標実(根本に虚があり、表面的な症状の発症に実邪が関与する)となっています。つまり虚証に属すタイプのものは、肝腎不足や脾腎両虚などの正虚によって起こる脳髄の消耗が中心であるが、臓腑失調によって生まれる痰濁や瘀血などの実邪も少しあり、反対に実証に属すタイプのものは、その実邪が中心であるが、根本に正虚によって起こる脳髄の消耗も存在するということになります。

虚実タイプの違いによる症状の大まかな特徴は、実証のタイプには興奮や抑制によって起こる顕著な感情や性格の変化が見られることで、これは虚証には見られません。

 

肝腎不足タイプ:加齢や脳卒中の後遺症などによって肝腎不足が起こり、腎精が骨髄を生成する働きが衰えると、髄海が消耗してこのタイプの認知症が発症します。記憶力・計算力・判断力が低下し言葉で意思を伝えられなくなるなどの認知症特有の症状に加えて、耳鳴・眩暈・足腰に力が入らず歩くのが困難・すぐに横になりたがるなどの肝腎不足による症状が現れます。

 

脾腎両虚タイプ:原因は肝腎不足タイプと似ていますが、脾胃機能が衰えて、これによって飲食物から気血を生化して脳へ供給することができないことも発病の要因になります。このタイプには腎精不足に脾気虚が合併したものと脾腎陽虚とがあり、症状に相違があります。前者では、肝腎不足タイプにみられる症状以外に、食欲減退・涎が出る・筋肉の萎縮・息が切れやすいなどの症状が現れますが、後者ではさらに手足や腹部の冷え・夜間尿・失禁・五更泄瀉(明け方に下痢をする)などが見られます。

 

痰濁タイプ:思い悩んだりストレスを感じたりすることが脾の運化作用に影響し、これによって生じた痰湿が神明を乱すことで発症するのがこのタイプです。知力の減退や無表情である以外に、わけなく泣いたり笑ったりする・小声でひそひそ話す・終日無言でじっとぼんやりするなどが現れます。このほかでは、胃腸の張り・食欲減退・よく痰が出る・頭が重い・浮腫など痰湿の一般的な症状を伴います。

 

血瘀タイプ:ストレスによって生じた気滞が長期化して瘀血を形成したり(気滞血瘀という)、脳循環障害などの疾病の後遺症で頭部の血脈に瘀血が阻滞したりすることが原因して発症するのがこのタイプです。表情がない・健忘・言語不利以外に、思惟活動や行動の異常・驚き怖がりやすいなどが現れます。このほかでは、目にくまができる・唇や舌が紫色・口が乾燥するが水分は欲しない・頭痛など瘀血による一般的な症状を伴います。

 

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