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内科系疾患 [貴方の病気のタイプ]


5 不眠症

まず、東洋医学で不眠治療を行おうとしたとき、注意しなければならない点は、現代医学で用いる睡眠導入剤や安定剤のような即効性を過度に期待しないことです。それは東洋医学の不眠治療が対症療法でないことによります。体質などの根本原因を調整するのに時間がかかることを予め知っておく必要があります。

不眠症に悩む多くの方は、東洋医学の治療に先駆けて現代医学の薬を服用していますが、東洋医学を始めた途端にそれを中止すると、眠れないため「東洋医学は効かない」と感じてしまいます。しかし元々治す過程が違っていることを思い出していただいて、最初は両方を併用して用い、次第に睡眠導入剤や安定剤の服用頻度を減らしながら、それから離脱していくことを考えてください。そして最終的に体質が安定できるようになれば、東洋医学の治療からも自立できるでしょう。

東洋医学では、睡眠の障害は精神活動の中枢である心神(神明とそれを蔵する心の総称)の失調としています。そのため不眠の原因にはいろいろなものがありますが、発症のメカニズムの中では、最終的にこの心神に影響が及ぶことになります。したがって漢方薬の治療においても鍼灸の治療においても、心神の調節ができる生薬やツボを処方の中に取り込むことが必要になります。

 

不眠症のおもな病証タイプ分類には、虚証に属す心脾両虚タイプ・心胆気虚タイプと、実証に属す痰火タイプ・肝火タイプ、さらに虚実が入り混じった虚実挟雑証に属す心腎不交タイプとがあります。

虚実タイプの違いによる症状の大まかな特徴は、虚証に属すタイプでは、日頃から慢性的に寝付きが悪かったり眠りが浅く目が醒めやすかったりして、疲れるとよけいに眠れなくなります。これに対して実証に属すタイプでは、眠れなくなると疲労に関係なくしばらくの間は一睡もできないほどの強い症状が続きますが、誘発要因が緩和してくると眠れるようになるといったことが繰り返されます。

 

心脾両虚タイプ:思い悩んで心神が消耗したり、あるいはそれによる食欲低下で脾胃の血を生産する機能が低下して心に血が供給されなくなったりすることで起こります。夢が多く熟睡感がないのもこのタイプの特徴です。このほかでは、動悸・めまい・息切れ・倦怠などの気虚証と血虚証の一般症状を伴うことがあります。

 

心胆気虚タイプ:元々驚きやすい性格や怖がりな性格の人に、何らかの不安や恐怖を覚える要素が加わって発症します(不安神経症といった病名がつく人に多い)。症状の特性では、不安で安眠できない・悪夢を見て目が覚めるとその後眠れないなどが見られます。

 

心腎不交タイプ:神経が高ぶることによって心火が亢進し、これが長引いて陰を消耗したり、あるいは老化(更年期も含む)によって腎陰が衰え、このために陰が陽を抑制できずに陽が亢進したりすることで発症します。そのため疲れると手足が火照って眠れなかったり、気持ちが高ぶって眠れなかったりします。このほかでは、動悸・口内炎などの心火の亢進による症状と、腰痛・耳鳴り・寝汗などの腎陰虚証の一般症状を伴うことがあります。

 

痰火タイプ:暴飲暴食が続いたり油物を偏食したりすると脾胃に痰火が溜まりますが、これが心神に影響するために安眠できなくなるのがこのタイプです。初期段階では、食べ過ぎたときに胃腸が張って眠れないといった症状が起こります。慢性化すると脾胃の機能が減退してくるので、この場合は胃腸が疲れると眠りが悪くなり、眠りが浅く夢が多いなどもみられるようになります。このほかでは、頭が重い・浮腫・舌に黄色くねっとりした苔が付くなど、痰火証(痰湿証が熱化した病証)の一般的な症状を伴うことがあります。

 

肝火タイプ:ストレスや怒りによって気持ちが鬱積し、これが熱化して発生する肝火が心神を乱すため安眠できなくなるのがこのタイプです。興奮や目が醒えて眠れず、季節的には春先にひどくなりやすいのが特徴です。このほかでは、イライラ・口が苦い・目の充血・偏頭痛など、鬱熱証(気滞が熱化した病証)の一般的な症状を伴うことがあります。

 

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