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内科系疾患 [貴方の病気のタイプ]


6 脳循環障害(脳梗塞・脳出血)

東洋医学では脳循環障害を、風邪が中(あた)って起こる「中風」と呼んでいます。また卒然(突然)倒れて意識不明になることから「卒中」ともいわれます。そして、この風邪の多くは、精神の興奮や疲労や老化などが起因して体内に起こる風であることから「内風(風気内動)」としています。また五行論では、風と肝はともに「木」に属しており、肝病証の多くが内風を起こしやすいため、風気内動は「肝風内動」とも言われます。

 

中風には、発症直後に起こりやすい意識障害と、半身不随を中心とした後遺症があります。このうち、意識障害を伴うより重篤なものは、風が体内の深い部分にある臓腑にあたったとして「中臓腑」と呼びます。意識障害がなかったり、意識が回復しても半身不随や失語などを中心とした後遺症が残るものは、風が比較的浅い部分にある経絡にあたっているとして「中経絡」と呼んでいます。

中臓腑では、まず意識の回復を最優先させる必要があるため、こまかい病証タイプは後回しにして、脱証と閉証という意識障害に関係する2つの病証にしぼって鑑別します。そして治療では、脱証には「回陽救逆=かいようきゅうぎゃく」を行い、閉証には「開竅=かいきょう」を行って意識回復をはかります。ただし、日本では意識障害のある段階で漢方薬を服用させることは難しいので(中国では漢方薬の点滴などもある)、治療に関しては鍼灸に限定して紹介していきます。私を含めて当院のスタッフが、病院に(医師の同意の上で)出張治療に行き、意識回復に貢献したケースも多数あります。

 

中経絡のおもな病証タイプ分類には、肝陽上亢タイプ・気虚タイプ・湿熱タイプ・腎水虚損タイプなどがありますが、一般の病気と異なり、治療に際しては「通絡」により経絡の循行を改善させるための生薬や鍼灸の操作がないと、半身不随などへの効果は半減します。

 

肝陽上亢タイプ:平素より精神が抑鬱傾向にあったり怒りっぽかったりする人が、過剰に興奮して肝陽が亢進するか、あるいは肉体疲労や性行為による疲労で肝腎の陰が消耗して肝陽を抑制できなくなって発症します。高血圧や偏頭痛・耳鳴り・肩こりなど上半身に気血が鬱滞しやすいのが特徴で、このほか咽の渇き・目の充血・イライラ・舌の色が赤く黄色い苔があるなどの症状が見られます。

 

気虚タイプ:一般に肥満傾向の人で、興奮はあまりひどくないが、肉体疲労などによって気が消耗して推動作用が減退し、これによって瘀血や痰湿が停滞して経絡の循行に弊害が及ぶことによって発症します。前駆症状としてめまいが起こり、発症後は痰が多く出ます。このほかでは息切れ・手足がだるい・舌質は淡く歯痕があるなどの気虚の一般的な症状と、むくみ・白くねっとりした苔があるなどの痰湿の一般的な症状とが見られます。

 

湿熱タイプ:日常の食生活で濃い味のものや油物を好んだり、お酒を多く飲んだりする人が、ストレスを受けたりすることによって発症します。黄色い痰が出る・むくみ・舌が赤く黄色くねっとりした苔があるなどの湿熱の一般的な症状が見られます。

 

腎水虚損タイプ:加齢によって腎精が衰退しているところに、過労や性行為などで陰精が消耗したために、睡眠中や性行為の後に発症するタイプです。足腰に力が入らない・耳鳴り・眼精疲労など、肝腎陰虚による症状がみられるほか、咽の乾燥・手足のほてり・舌の色が赤く苔が少ないなどの陰虚の一般的な症状を伴います。

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