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内科系疾患 [貴方の病気のタイプ]


8 眩暈(めまい)

めまいや立ちくらみを中医学では「眩暈=げんうん」といいますが、これは目の前が暗くなることを意味する「眩」と、周囲がぐるぐる回って見えたり、自分が揺れ動いているように感じたりするという意味の「暈」とを熟語にしたものです。このぐるぐる動き回ったり揺れたりする症状の特性は、風邪の特性と一致することから、眩暈の中心的なメカニズムは体内に吹く風(「内風」という)が生まれることとしています。

 

眩暈のおもな病証タイプ分類には、実証に属す「肝陽タイプ」「痰湿タイプ」と、虚証に属す「気血両虚タイプ」「腎虚タイプ」がありますが、このうちの痰湿以外の病証では、みな内風が発生することによって発症します。そのため、関連する漢方薬や鍼灸の治療では、通常の証タイプの漢方薬やツボに加えて、内風を消す(「熄風=そくふう」という)ための生薬やツボが配合される必要がありますので、その点に注意して学習してください。

虚実の眩暈の特性では、実証に属すものが発作的で突然激しく起こるのに対して、虚証に属すものでは、慢性的で疲労によって軽度な症状が反復します。

 

肝陽タイプ:ストレスや精神の抑鬱および過剰な興奮などが原因して起こるタイプです。これらの原因は肝気を鬱結させますが、鬱結が強いと熱化して肝陽の亢進を生みます。熱は上昇しやすい性質を持つため、肝陽が頭部に上り、そこで内風を起こすと眩暈が発症します。このときの内風は「肝陽化風」といわれます。ストレスや怒りで「頭にくる」という人は、眩暈以外にもいろいろな症状を引き起こし、全員めまいを起こすわけではありません。眩暈が起こるのは、内風が起こるかどうかにかかわっています。

このタイプの眩暈の特性には、上記の実証の特性に加えて、温まると悪化する・ストレスで誘発するなどがあり、随伴症状には高血圧・耳鳴り・肩こりなどが見られます。このほかイライラ・ため息・口が苦く感じるなどの肝気鬱結(または気滞)による症状や、咽の渇き・目の充血・舌の色が赤いなどの熱証の症状が見られます。

肝陽の亢進は、肝陽と肝腎の陰との陰陽失調によっても起こるため、加齢または過労や過剰な性行為などで肝腎の陰が消耗することも誘発原因になります。この場合は、病証の虚実性は虚実挟雑証となります。通常、肝陰は肝陽が亢進しすぎないように抑制する役割を担っているため、上述の原因で肝腎陰虚となっても肝陽の亢進による内風が起こります。ただし、このタイプの随伴症状には、さらに肝腎陰虚による足腰がだるい・目のかすみ・手足のほてり(五心煩熱)・寝汗なども加わります。

 

痰湿タイプ:食事の不摂生や飲酒の過度などによって生じた痰湿が原因して起こるタイプです。痰湿は「重濁」つまり重く濁って汚いという性質を持っていて、人体の清らかで澄み渡っているべき部位を障害します。頭部は「清空」ともいわれ、澄み渡っている状態で大脳機能や五官が正常に働くとされているため、痰湿がそこに滞ると、頭が重い・眩暈・耳が詰まって聞こえないなどの症状が現れます。現代医学でメニエール症候群といわれる人に最も多いのがこのタイプです。このタイプには、低気圧が近づいて雨が降ったり、飲酒が続いたりすると眩暈が誘発され、入浴や運動して発汗すると軽くなるといった特徴があります。このほかでは、胃腸の張り・食欲減退・よく痰が出る・浮腫など痰湿の一般的な症状を伴います。

 

気血両虚タイプ:疲労や脾胃の不調が原因して起こるタイプです。疲労は気血を消耗します。脾胃の不調で食欲が低下すると、水穀精微から気血が生成されなくなります。このとき気が血を頭部に上昇させることができず、また血が不足して頭部を栄養できなくなり、これによって内風が発生すると(この内風を「血虚生風」という) 眩暈が起きます。そのため、このタイプではちょっと疲れただけでもすぐに症状が出て、休憩して横になると軽減しやすいのが特徴です。このほかでは、倦怠感や疲労感・息切れ・汗かきなどの気虚症状と、唇や爪の色が淡い・女性では生理が遅れるなどの血虚症状の両方がみられます。

 

腎虚タイプ:睡眠不足や過剰な性行為、または加齢や腎臓の慢性疾患などで、脳髄を栄養する腎精が消耗して起こるタイプです。また、腎精不足は腎陰虚証になりやすく、これによって内風(この内風を「陰虚内風」という)が発生することも眩暈の原因となります。このタイプの眩暈は、慢性的で一般に夕方からひどくなり、熟睡した朝は軽くなるのが特徴です。随伴症状には、腎精不足による足腰がだるい・耳鳴りや難聴・夜間尿などと、肝血不足による目のかすみ・手足のひきつりなどが見られますが、陰虚を伴う場合はさらに不眠・咽の乾燥・寝汗・手足のほてりなどが見られるようになります。

 

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