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内科系疾患 [貴方の病気のタイプ]


9 秋の感冒

中医学では、感冒の治療に用いる漢方薬を、春・秋・冬で使い分けているのをご存知でしょうか。例えば、「カゼに葛根湯」とよくいわれますが、葛根湯は冬の寒い時期の感冒に使う薬で、秋の感冒には必ずしも向きません。その理由を少し詳しく説明しましょう。

 

感冒初期の治療では、通常抵抗力を高めるような治療ではなく、まだ体表近くにある外邪を取り除くことを目的とします。感冒を引き起こす外邪の種類は、風邪(ふうじゃ)を中心に、これに寒邪か熱邪が加わったものが一般的で、合わせて「風寒」「風熱」と呼びます。このため治療は、風邪を除く「疏風」と、寒邪を除く「散寒」か、熱邪を除く「清熱」を合わせて行うことになります。感冒を「カゼ」というのは、病邪の中心が風邪であることによります。

体表から外邪を取り除く具体的な方法は、発汗を促して汗とともにこれを体外に発散させることであるため、疏風は「疏風解表=そふうげひょう」(簡単には「解表」)ともいわれます。実は、葛根湯は風寒を除く「散寒解表」の薬なので冬の感冒に向くのです。気温が上がってくる春の感冒では、風熱を除く「清熱解表」の薬を多く用います。では、秋の感冒の特徴と治療はどうなるでしょうか。

 

秋は乾燥が強まる時期で、外邪の中でも「燥邪」に侵されやすい季節だとされます。実際の天候を考えれば、秋には台風が来たり長雨が降ったりすることもあり、冬の方が乾燥していると思われるかもしれません。しかし、それまでの夏の蒸し暑い気候にさらされていた私たちの身体は、乾燥が出始める秋の気候に順応しきれずに、冬よりもむしろこの時期に容易に燥邪に侵襲されてしまうのです。ですから秋の感冒の症状では、咽が乾燥して乾いた音の咳が出る・痰は少ない・鼻や口が乾く・皮膚がかさつくなど、乾燥による症状を伴うのが特徴です。そこで秋の感冒の場合は、あまりたくさん汗をかかせてしまうと、ますます乾燥がひどくなってかえってよくありませんので、過度に解表しないよう注意が必要なのです。

 

秋の感冒は、さらに時期によって「温燥タイプ」と「涼燥タイプ」に分かれます。

 

温燥タイプ:初秋の頃でまだ気温が高い時期のもので、上述の燥邪の症状に加えて、悪寒よりも発熱のほうが強い・痰は出ないか、出ても少量で粘つく・咽が腫れて痛むなどの熱性の症状が現れます。

 

涼燥タイプ:晩秋の頃になって気温が低くなった時期のもので、燥邪の症状に加えて、発熱よりも悪寒のほうが強い・透明な痰が出る・冷気を吸い込むと咳が出るなどの寒性の症状が現れます。

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