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婦人科疾患 [貴方の病気のタイプ]


7 子宮筋腫・卵巣膿腫 (癥瘕)

1) 概略

子宮筋腫や卵巣膿腫は、中医学でいう「癥瘕(=ちょうか)」(下腹部にできる塊の総称)に属します。

したがって、子宮筋腫や卵巣膿腫を鍼灸や漢方薬で治療する場合は、癥瘕の治療を参照するわけですが、鍼灸も漢方薬も純然たる医療ですから、何でもかんでも魔法のように治せるわけではありません。そこで注意すべきことは、一部の患者本位でない鍼灸師や薬剤師の言葉に踊らされて、大量出血や貧血などの症状が非常に辛いにもかかわらず、無理して鍼灸や漢方薬の治療を続けないということです。手術に恐怖を感じるのは一般の人の心情ですが、身体にダメージが大きいにもかかわらず我慢して、結果的に手術を受けるはめになることが、しばしばみられます。そうすると、このダメージが後々の更年期障害や老化の進行などにつながって、もっと早く手術を受ければよかったと後悔することも少なくないのです。ですから、安易に治療を請け負う鍼灸師や薬剤師よりも、しばらく治療しても効果があがらない場合に、その様子に応じて手術を勧める人の方が信頼できるとすることができます。

 

2) 病証タイプ

中医学では、基本的に癥瘕(子宮筋腫や卵巣膿腫)のような塊りは、人体中を流れている気血津液が滞ったものと考えます。したがって、気が滞った「気滞タイプ」、血が滞った「瘀血タイプ」、津液が滞った「痰湿タイプ」などがありますが、単独のもの以外に複数のものが滞った場合もあり、その中心には瘀血があるとされています。またこのほかでは、暴飲暴食が原因する「食滞」が関与する場合もあるとされています。

 

①瘀血タイプ:婦人科の瘀血は、流産や難産を経験した人、または生理痛がひどい人に見られやすい病的な物質です。瘀血はまた、冷えが影響したり、ストレスや緊張が持続することでも起こります。このうち冷えが原因するものは、産後の肥立ちが十分でない時や月経時に、ミニスカートなどの冷えやすい衣服でいたり冷たいものを食べ過ぎたりすることで起こります。

瘀血による癥瘕には、患部を触れると硬く、推しても動かないという特徴があります。また、卵巣膿腫では、チョコレート膿腫といわれる人に多く見られます。月経の特徴では、月経痛がある人は刺すように痛み、月経血は色が暗く、大きめの血塊が混じります。

 

②気滞タイプ:気滞は、ストレスや緊張が、肝のもつリラックスを促す「疏泄」という作用を失調させることで起こります。疏泄が悪くなると、精神の緊張をリラックスさせられなくなるばかりか、筋肉などを流れる気血をスムーズにさせることができなくなります。これによって、子宮筋に気を中心とした滞りが生まれるのが、このタイプの癥瘕です。

気滞による癥瘕には、患部を触れるとやわらかく、推すと動く・塊りができたり消えたりして一定しないという特徴があります。月経の特徴では、月経痛がある人は痛みの部位が移動したり、脇腹へ放散する・お腹が張って生理が始まりそうでもなかなか始まらない・月経前に乳房の張りが強まるなどがあります。

 

③痰湿タイプ:痰湿は、普段から太り気味の人やむくみやすい人に多く見られる滞りです。通常、痰湿だけでは癥瘕になりにくく、多くの場合は気滞や瘀血と結びつくことで発症します。

このタイプで典型的なものに、水の溜まった卵巣膿腫がありますが、一般的な痰湿による婦人科への影響は、おりものの量で判断しますので、量が多い人は注意してください。

 

以上のどのタイプも、全身的な体質が発症の原因になりますので、間違いなく鑑別するには、基礎知識の「気血津液の実証」を参照してください。

  

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