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婦人科疾患 [貴方の病気のタイプ]


3-2 不妊症② 

不妊症の病証タイプ(実証タイプ)

不妊症の病証タイプのうちよく見られるものには、虚証に属す陽虚タイプ・陰虚タイプ・血虚タイプと、実証に属す肝鬱タイプ・寒邪タイプなどがあります。また、陽虚タイプ・寒邪タイプは寒証に属し、陰虚タイプは熱証に属します。

しかし、これらのタイプの相違の前に、婦人の体質が月経周期に合わせて変化していることも忘れないようにすべきで、この周期のリズムの乱れも、妊娠するための体内の環境が整っていない現れとなります(基礎知識の「婦人の生理」を参照)。そこで最近では、基礎体温を計測して、2層に分かれていなかったり、分かれていても低温期や高温期が不安定であったりする場合には、周期のリズムを整える「周期治療」を各病証タイプ別の治療に組み込むことで、よい結果が出るようになっています。

   

主な不妊のタイプ

原因

特徴

実証肝鬱タイプストレス月経不順,生理前に乳房や下腹部が張る
寒邪タイプ冷えによる血行不良下腹部が冷えて月経痛が激しい,月経血は紫色で塊が多い,
虚証陽虚タイプ先天的または慢性的な冷えによる体力低下全身の冷え,高温期の基礎体温が低い,下腹部も冷えるが月経痛は軽度
陰虚タイプ性行為の過剰,夜間の労働,熱性病の後遺症月経周期が短い又は不正出血,低温期の基礎体温が高い,手足がほてる,寝汗,咽の乾燥
血虚タイプダイエットや流産などによる血の消耗月経が遅れる,経血は色が薄く量が少ない,幼少期から痩せていて貧血気味

 

  

肝鬱タイプ:このタイプでは、ストレスや緊張が肝の疏泄(リラックスを促す作用)に影響し、気血の流れ(特に衝任脈の流れ)を失調させるため排卵がスムーズにいかないか、または輸卵管の流れが悪く順調に受精できないために妊娠に至りません。月経周期は、疏泄の失調が気血の阻滞を招いている人では遅れぎみになり、疏泄過多や気の鬱積が熱化している人では逆に早まります。ほかに特徴としては、生理前に乳房が張りイライラするなどがあり、ひどいと1週間近くもそうしたPMS(月経前症候)が続き、下腹部が張って生理が始まりそうなのになかなか始まらないといった症状も見られます。また、排卵時にも腹部の張りや痛みなどが出る人もいます。月経痛のある人は、張り感が強い痛みを感じ、人によってはそれが下腹部から両側まで広まります。(そのほかの全身症状については、基礎知識の「肝胆の病証タイプ」を参照)

このタイプによって起こる単純な生理不順や月経痛であれば、ストレスによる肝の気の鬱積(肝気鬱結)に対して、気の流れを促す「行気」を行うだけでよいのですが、不妊治療ではさらに「気血調和」や「陰陽調和」をはかる必要があります。とりわけ生理後から排卵までの期間は、陰血が補充されなければならない時期ですので、生理が遅れるタイプの人にはこの時期に陰血の補充も行い、逆に生理が早まるタイプの人には、この時期に陰血を補充するだけでなく、鬱熱を取って陰血の消耗を防ぎます。

月経痛がひどいタイプの中には、気の鬱結が長引いて血の循環まで悪くなった「気滞血瘀」になっている人も多いので、そういう場合は月経数日前から月経初期までは瘀血を除く治療を加味します。この治療は、もし妊娠しているとできないものですので、3~4ヶ月は避妊をして先に瘀血を改善し、その後タイミング療法などで妊娠をはかるようにした方が、最終的にはよい結果につながることが多いようです。

 

寒邪タイプ:月経期に冷たい物を飲食したり、薄着をして冷やしたりしていて、冷えが開いている子宮口から入り込み、これが衝任脈や子宮内の気血のめぐりを悪くすることで起こるタイプです。基礎体温の低温期が長引くため月経は遅れやすく、高温期にも体温が上がらないか、上がっても安定しないことが多く見られます。特徴としては、下腹部が触ると冷たく、月経血は暗い紅色をしていて血の塊が混じることもあります。月経痛がひどい人は、下腹部が絞られるように痛み温めると和らぎます。これに湿邪が加わるタイプではさらに、透明なおりものが多く出るようになり、浮腫みなどを伴います。

このタイプの治療では、鍼灸の場合でも漢方薬の場合でも、温めて冷えを散らす「温経散寒」を行うのが通常ですが、一方的に温めるより周期治療の考えを取り入れて、月経直後からの数日間は、陰血の補充を組み合わせて陰陽調節を行うようにした方が効果的です。(実際の治療方法は、鍼や漢方薬の治療を見てください)

 

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