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臓腑 [東洋医学の基礎知識]

4 心 (1)心の生理作用 心の中心的な生理作用には「主血脈」「主神明」があります。「主血脈」は、心が胸中にあって血液循環の中心的な臓腑であることを示しています。神明とは意識や思考活動や感情の中枢として働く物質であり、心はそれを貯蔵して(「蔵神」と呼ぶ)その機能を主る「主神明」という作用を持っています。また、大脳は「元神の府」とされていることから、神明の機能は脳の機能と同一視されます。 このほか心は五行の「火」にあたる臓腑で、「水」にあたる腎と協調して、体温調節などの体内の寒熱バランスの調整にも関与しています。この心の火(「心火」という)と腎の水(「腎水」という)の協調が乱れると、冷え症・ほてりやのぼせ・冷えのぼせなどの症状を伴う病証(「心腎不交」という)が現れます。 「主血脈」の作用が失調すると、動悸や胸痛および血行異常などが現れますが、これに寒熱バランスの失調が加わると、出血を伴う「血熱証」や冷えによる循環障害である「寒凝血瘀証」を起こします。 「主神明」の作用の失調は、不眠などの睡眠障害、精神不安・精神錯乱などの精神疾患、健忘(痴呆)や意識障害などの中枢系の疾患に及ぶことがあります。    (2)心の病証タイプ 実証に属す病証タイプには「心火亢盛証」「心血瘀阻証」「痰迷心竅証」「痰火擾心証」などがあり、虚証に属す病証タイプには「心気虚証」「心陽虚証」「心血虚証」「心陰虚証」などがあります。 上述の生理からも分るように、心の病証でみられる代表的な症状には、動悸・胸痛・不眠・精神不安などがありますが、その症状特性には実証と虚証の大きな違いがあります。このうち実証に属すタイプに共通して言えるのが、急速に激しく起こるという特性です。虚証に属すタイプに共通してみられるのが、実証の場合ほど激しくはないが、慢性的で疲れると誘発されるというものです。それ以外の特性については以下をご覧ください。   心火亢盛証:過剰な感情の高ぶりなどが原因し、心の熱が亢進して起こるタイプです。そのためどの症状も暑さや入浴などで温まると悪化するほか、特徴的な症状には口内炎・鼻血や皮下出血などがあります。   心血瘀阻証:外傷の後遺症・難産・慢性の循環器障害などで、血流が停滞して発症するタイプです。瘀血の特性である刺すような痛みを伴いやすく、動悸にもこの痛みが伴います。   痰迷心竅証・痰火擾心証:肥満傾向にある人や飲酒・油物などの偏食で痰湿が生まれ、これが心神(心と神明の総称)の働きを乱すという病証です。どちらも神明機能が失調するため精神症状が中心となって現れますが、寒熱性の相違でその症状に違いが出ます。熱性の痰火擾心証では、例えばわめき叫んだりひどいと精神錯乱などの激しい精神症状がみられますが、熱性のない痰迷心竅証では、例えばぶつぶつ小声で独りごとを言うなどの比較的静かな症状がみられます。   一般的な全身症状については、心血瘀阻証は気血津液の病証では血瘀証に属し、痰迷心竅証や痰火擾心証は痰湿証に属しますので、各々の項を参照してください。   虚証に属すものは、肉体疲労や精神疲労などが原因で起こるほか、上記の実証が慢性化すると次第に虚証に移行します。これに属すタイプのうち心気虚証は肉体疲労や活動時に症状が出やすいという特徴があり、これが心陽虚証に発展すると冷えるとよけいに悪くなります。 これに対して心血虚証や心陰虚証では疲れた日の夜や、女性では生理の後半になると症状が出やすくなりますが、特に心陰虚証では温まるとよけいに悪くなります。   一般的な全身症状については、気虚証・陽虚証・血虚証・陰虚証の各々の項を参照してください。  

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