コンセプト

  • ホーム > 学習コーナー > 臓腑

学習コーナー

臓腑 [東洋医学の基礎知識]

6 腎(腎膀胱) (1)腎膀胱の生理作用 腎が水液代謝に関与して「主水=みずをつかさどる」という作用を持っていることは、現代医学の中の腎臓の機能と同様ですが、中医学で考える腎の概念は更に幅広いものになっています。その中心的な生理作用が、生殖・発育・老化に関係する「主先天=せんてんをつかさどる」というものです。 まず、人体の水液代謝に関しては、腎のほか既に紹介した脾や肺の作用が協調して働くことで、正常な状態を保っています。この水分代謝の過程で腎の関与が最も大きいのが、やはり排尿に関するものです。肺・脾の働きで全身を回って、老廃物を含んだ水液は最後に腎に運ばれますが、腎は不要なものだけを尿に気化して膀胱から排泄し、まだ利用できるものは再吸収します。このとき膀胱は、腎の命令で尿を貯蔵し、必要に応じて排泄します。腎や膀胱による水液代謝の失調は、排尿困難・頻尿・失禁・排尿痛・血尿などの排尿異常となって現れるほか下肢の浮腫みなども引き起こします。ただし、これらの症状が急速に起こる場合、膀胱の失調による実証のことが多く、慢性的なものは腎機能の衰退による虚証のことが大半です。 つぎに先天についてですが、腎は両親から受け継いだ先天の精と気を「腎精」「腎気」という形にして貯蔵しています。このうち腎精は、骨や髄および髄海とも言われる脳髄を滋養するとともに、卵子や精子のもとになっています。そして腎気は腎精を活用するための力になっており、生殖の気である「天癸=てんき」というものを生み出して、生殖能力を支えています。そのため腎の虚(精気の不足)が起こると、小児の発育の遅れや老化現象(足腰の衰え・歯が抜ける・痴呆)、および生殖能力の衰え(月経不順・不妊・インポテンツ)などが現れるとされています。 また、過労や過剰な性行為および加齢などで起こる、腎の精気の消耗による脳髄の滋養不足は、耳鳴り・難聴・健忘・めまい・頭痛など頭部の症状を起こし、パーキンソン病や認知証などの中枢神経系の疾患の原因になるとされています。 このほか腎は、「主納気=のうきをつかさどる」という作用を持ち、肺が主る呼吸活動を補助しています。呼吸活動について肺と腎の作用を対比すると、肺は呼気を主り、腎は吸気を主るとされていますが、この吸気を促す作用が「主納気」です。そのため腎の衰えは、吸気困難や慢性的な咳などの症状となって現れることがあります。   (2)腎膀胱の病証タイプ 腎膀胱の主な病証タイプには、生理作用でも紹介したように、排尿に関する実証の膀胱病病証(「膀胱湿熱証」が中心)と、排尿・発育・生殖・老化・骨や脳髄の慢性病に関する虚証の腎病病証とがあります。 腎は先天の陰陽にも関係するため、実際の疾病では陰や陽の不足を伴った病証に移行してしまうため、臨床的にみて主なものは「腎精不足」「腎陰虚証」「腎陽虚証」の3つと納気の失調を伴う「腎不納気証」です。 ほかに「腎陰陽両虚証」や「腎気不固証」等々がありますが、複雑なためここでは割愛します。病情が複雑な人は、専門家に相談されることをお勧めします。   膀胱湿熱証:上記にあるように、排尿に関する実証の病証でよく見られるのが、このタイプです。寒いところで排尿を我慢すると、膀胱に貯蔵されている尿が熱化してこの病証を起こします。ほかに、飲酒や油物の偏食などで内生した湿熱が膀胱に注いだりすることによっても起こります。わかりやすいものとして、急性の膀胱炎や尿管結石などはこのタイプに属します。その具体的な症状は、急速に激しく現れる尿道の灼熱感・排尿痛・頻尿・排尿困難・血尿などです。   腎精不足:腎病証は過労や過剰な性行為および加齢のほか、先天的な虚弱や泌尿器系統の病気の慢性化などで起こりますが、先天や脳髄の滋養不足に関係する症状(生理作用のところを参照)が中心となって現れるのがこの病証タイプです。ただし陰陽の失調による冷え症状や熱症状は伴わず、これらが出るものが、以下の腎陰虚証や腎陽虚証になります。   腎陰虚証:腎精不足の症状に加えて、男性では夢精・女性では不正出血や生理が早まるなどの、熱に伴う症状が現れます。   腎陽虚証:生理作用で述べた腎の機能低下による症状に加えて、明け方に下痢をする(「五更泄瀉=ごこうせっしゃ」という)・足腰の冷痛・男性のインポテンツ・女性の透明なおりものなどの、冷えに伴う症状が現れます。   ほかに一般的な全身症状については、気血津液の痰湿証・陽虚証・陰虚証の各々の項を参照してください。  

固定ページ: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

記事一覧へ