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臓腑 [東洋医学の基礎知識]

(3) 体温調節に関与する臓腑(心・腎) 人体の生命活動は適正な体温の下で行われ、体温が低くなり過ぎたり、逆に上がり過ぎたりすると身体に変調をきたします。中医学では、体内の陰陽バランスを重要視しますが、このうち陰液(または陰血)と陽気のバランスが体温を一定に保つ役割を担うとしています。そして、その中心となるのが心と腎の中の陰液と陽気です。陽気とは、気の中で温煦(=おんく)という作用が強い部分であり、陰液とは、血や津液や精など液体性の各物質の中で冷却作用が強い部分をいいます。   心と腎の五行の属性を見ると、心は「火」に属し、腎は「水」に属します。そのため両者を陰陽で比較すると、心は陽に属し腎は陰に属すとしています。このことは、心では陽気が陰血より豊富であり、心陰(心の陰血)の不足と心陽(心の陽気)の過剰による熱状態(「心火」という)が起きやすいのに対して、腎では陽気より陰液が豊富であって、腎陽(腎の陽気)の不足と腎陽が排泄できなかった「腎水」という冷たい水の停溜による冷え状態が起こりやすいことと関係しています。 本来、陰陽は均衡状態を保つためにバランスをとるべきなのですが、臓腑個々の特性として陽気と陰液との分量が均等でない場合は、単独の臓腑の中だけでは均衡はとれません。そこで二つの臓器間の協調でそのバランスをとろうとするわけです。 すなわち、心は陽気が豊富なため、不足がちな腎の陽気を温煦し、これによって腎水が停溜しないように腎陽の利尿を補佐します。これに対して、腎は腎陰が豊富なため、不足がちな心陰を滋養して、これによって心火が亢進しないように心陽に対する冷却力を補佐します。このような心腎の関係を「心腎の交通」と言っています。そして、この関係は全身の陰陽バランスを保って、体温を適正に調整することに大きく関与しているのです。   こうした心と腎の協調が乱れると、冷え症・ほてりやのぼせ・冷えのぼせなどの症状を伴う、「心腎不交」という病証が現れます。つまり、腎陰が消耗して心陰を滋養できなくなり、心火の亢進が抑えられなくなると、ほてりやのぼせが現れますし、逆に、心陽が衰えて腎陽を温煦できなくなり、腎水が停留してしまうと冷えが起こります。  

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