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慢性疲労の鍼灸治療 [鍼灸の知識]

 

肺気虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

気虚に属する虚労に対する鍼灸治療で最初に注意しなければならないことは、ツボの数を多くしないことです。古来より伝えられることに、ツボに刺した鍼を抜くときに気が漏れ出るとされます。そのため、うんと細い鍼で数ミリしか刺さない場合でも、ツボが多いと、次の日に「鍼返し」と言われるようなだるさに襲われます。もともとだるさが主訴のような病証ですので、これではあまりよい治療とは言えません。そこでもし身体の前面と背面の両方のツボを使いたいという場合には、日を替えて治療した方がよいでしょう。

 

そこで、一つのプランとしては、背面の日は「肺兪」「膏肓」「脾兪」にして、前面の日は「太淵」「合谷」「足三里」を用います。もし、気陰両虚になっている人なら、前面の日に「復溜」を加えるとよいでしょう。但し、前面と背面の治療日は、あまり間隔を空けてはいけません。できれば同じ週内にすることを勧めます。

次第に効果が現れてくれば、体力の回復具合に合わせて同じ日に両面を治療することも可能になります。

 

 

脾気虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

肺気虚と同様に、あまりツボ数を増やさないほうがよいため、身体の前面と背面に日を分け、あまり間隔を空けないように治療することを勧めます。

処方例の一つをあげるとすると、背面の日は「脾兪」「膏肓」「胃兪」、前面の日は「太白」「合谷」「足三里」を用います。もし、水分代謝の悪い人なら前面の日に「陰陵泉」を加え、気血両虚になっている人なら、前面の日に「三陰交」を加えるとよいでしょう。

   

 

心気虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

他のタイプの気虚と同様に、あまりツボ数を増やさないほうがよいため、身体の前面と背面に日を分け、あまり間隔を空けないように治療することを勧めます。

処方例の一つとして例えば、背面の日は「心兪」「膏肓」「脾兪」、前面の日は「神門」「合谷」などを用います。

 

 

腎気虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

あまりツボ数を増やさないほうがよいのは、他のタイプの気虚と同様です。処方例の一つとしては、「太谿」「合谷」「足三里」をベースとし、足腰のだるさがある場合は「腎兪」、呼吸に影響があるなら「太淵」、頻尿や尿漏れがあれば「気海」など、症状に合わせてツボを加えます。

 

※ツボの選択については、各先生によって様々です。ここに挙げたのは代表的なものであることをご承知下さい。

 

 

 

心血虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

気虚タイプの虚労と同様に、あまりツボ数を増やさないほうがよいため、身体の前面と背面に日を分け、あまり間隔を空けないように治療することを勧めます。

 

処方例の一つとして例えば、背面の日は「心兪」「膈兪」、前面の日は「神門」「三陰交」などを用います。

精神不安が大きい人は「四神聡」などを加えます。また心脾両虚になっている人なら、背面の日に「脾兪」、前面の日に「太白」などを加えるとよいでしょう。

 

 

肝血虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

一般に血虚に用いるツボには「膈兪」「三陰交」「血海」があります。前回の心血虚ならこれに「神門」や「心兪」を加えるとよく、今回の肝血虚には「肝兪」を加えれば対応できます。

個々に症状が強い場合は、これをベースにして、例えば眼精疲労なら「晴明」、婦人科の症状なら「関元」、めまい立ちくらみなら「百会」、筋肉のひきつりなら「陽陵泉」といったように組み合わせるといいでしょう。

 

※ツボの選択については、各先生によって様々です。ここに挙げたのは代表的なものであることをご承知下さい。

 

 

 

心陰虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

このタイプによく用いるツボには、「復溜」と「心兪」「神門」の組み合わせなどがあります。「復溜」は、一般的に陰虚体質に用いる代表的なツボです。「心兪」や「神門」は、心の虚証によく用いるツボです。これらのツボに「補法」という手技を用いると、心陰虚タイプの虚労を治療することができます。

もし、動悸がある人なら「膻中」、不眠がある人なら「安眠」などのツボを加えると、個別の症状にも対応できます。

 

 

肺陰虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

このタイプによく用いるツボには、「復溜」と「肺兪」「太淵」の組み合わせなどがあります。「復溜」は、心陰虚タイプのところでも紹介したように、一般的に陰虚体質に用いる代表的なツボです。「肺兪」や「太淵」は、肺の虚証によく用いるツボです。これらのツボに「補法」という手技を用いると、肺陰虚タイプの虚労を治療することができます。

もし、気陰両虚になっている人なら、気を補う「合谷」「足三里」などのツボを加えるといいでしょう。

 

 

胃陰虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

このタイプによく用いるツボには、「復溜」と「胃兪」の組み合わせなどがあります。「復溜」は、他の陰虚タイプのところでも紹介したように、一般的に陰虚体質に用いる代表的なツボです。「胃兪」は、胃の虚証によく用いるツボです。操作では通常、「補法」という手技を用いると有効性が高まります。

便秘が強い人には「天枢」や「大腸兪」、咽の渇きが強い人には「内庭」といったように、一人ひとりの状況に合わせた対応が必要となることもありますので、一度専門家に診てもらうことを推奨します。

 

 

タイプ・腎陰虚タイプの虚労に対する鍼灸治療

多くの場合、諸々の陰を補う作用のある「復溜」や、肝経にも腎経にも作用して陰を調節できる「三陰交」をベースにします。これに肝を補うツボ(例えば「肝兪」など)や腎を補うツボ(例えば「腎兪」など)を配合することで、基本的な対応ができます。針の操作では「補法」という手技を用いることができれば、一層有効性が高まります。

もし、特に辛い症状があれば、それに対応するツボをさらに加えることも可能です。主なものでは、眼精疲労=「晴明」、月経のトラブル=「中極」、めまい=「百会」、筋肉のひきつり=「陽陵泉」、耳鳴り=「聴宮」などがあります。

 

※ツボの選択については、各先生によって様々です。ここに挙げたのは代表的なものであることをご承知下さい。

 

 

 

心陽タイプの虚労に対する鍼灸治療

心陽虚タイプの虚労に対する治療では、心を補うツボの代表である「心兪」に、灸頭鍼などの温法を施すことを行います。

もし、動悸が激しい場合は「膻中」などのツボを配穴し、精神疲労が激しい場合は「四神聡」などのツボを配穴します。また、心腎陽虚に発展している場合は、「命門」「腎兪」「関元」などのツボを配穴し、これらに温法を施します。

 

 

脾陽タイプの虚労に対する鍼灸治療

脾陽虚タイプの虚労に対する治療では、お臍(ツボの名前では「神闕」という)のお灸がよいでしょう。臍には直接お灸をすえたり、鍼を打ったりすることはできませんので、棒灸や隔物灸を行います。

 

このほか「脾気虚タイプの虚労」で使ったツボ(陰陵泉・足三里など)を応用することができますが、その場合は灸頭鍼などの温法を施すとより効果的です。

また、脾腎陽虚に発展している場合は、「神闕」に「命門」「関元」などを配穴して温法を施すとよいでしょう。

 

 

腎陽タイプの虚労に対する鍼灸治療

今まで紹介した治療をみてもわかるように、陽虚タイプの虚労全般に用いる治療法は灸頭鍼などの温法です。虚労は慢性で病気の経過が長い疾患ですから、一週間に1回鍼灸院に通う程度では、なかなか効果が上がってきません。通う回数を多くするか、そうでなければ、家庭でもせんねん灸などを使って治療することをお勧めします。

 

腎陽虚タイプの虚労によく用いるツボには、「命門」「腎兪」「関元」「中極」「湧泉」「太溪」などがあります。全部使う必要はありません。頻繁に治療する場合は、2~3箇所くらいを選んでください。

選択のポイントとしては、頻尿や尿漏れあるいは浮腫みなどがある人は、下腹部の「関元」か「中極」を入れます。腰が冷える人は「命門」や「腎兪」を入れます。足が冷える人は「湧泉」「太溪」を入れます。これらを含めて2~3箇所にします。症状が多い人は、ツボの組み合わせを2パターン作り、日替わりにして用いるといいでしょう。

もし、動悸などの心の症状があり、心腎陽虚に発展していると考えられる人は「心兪」や「神門」などを組み合わせます。また、食欲不振や下痢などの脾虚の症状があり、脾腎陽虚に発展していると考えられる人は「脾兪」や「足三里」などのツボを組み合わせるといいでしょう。

 

※ツボの選択については、各先生によって様々です。ここに挙げたのは代表的なものであることをご承知下さい。

 

 

 

 

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